三日月の町語録
初めてこの町を訪れたニュヨーク・ブルックリンのタクシー運転手が、ニューヨークに帰った途端、
「向こうでは、俺達と全く同じような話し方をしていたぜ!」
すかっりニューオリンズのアクセントが身についた話し方で、たちまちニューヨーカーを面喰らわせてしまいました。
本当に、あのブルックリンと深南部の真った中にあるニューオリンズのことを言っているのですかって?そうなのです。この三日月の町では、典型的な南部のアクセントを耳にすることはありません。港と歴史のある町ならどこも、ニューオリンズのアクセントもまた、幾つもの文化ど風土が混じり合い、独特の美しさと輝きをもっています。ですから同じ港町であるニューヨークとニューオリンズの人々のアクセントが似通っていることも不思議ではありません。ニューオリンズのアクセントは、ブルックリンのアクセントを柔らかくし、流れるような南部の抑揚が少しついたものです。しかし、アクセントがいかに似ているかは、誰もが聞けばすぐにわかります。
この町が、かってのフランス語の植民地であり、有名なフランス料理店やフレンチ・クオーターがあることから、訪れる人はたいていフランス系の町という先入観を持っています。確かにフランス系には違いありませんが、そうでない部分もあるのです。ニューオリンズにはフランスの名前がついている通りがたくさんありますが、それらはこの町独特の発音で呼ばれています。たとえば、フランス語のチャートレは、英語の”チャーターズ”と同じく発音され、バガンディは、バを強調するのではまく、真ん中のガのところを強く発音されます。また、コンティではなく、コンタイと呼ばれ、イバビルはアイバビルストリートとやはりアイを強調して発音するのです。
この土地で使われる”ニューオリンズ”の発音を書き表すのは不可能に近いといえるでしょう。まず言えることは、ニューオーリンズとは決して呼ばれないということです。(当然、歌は除き、また地区や通りに使われているオーリンズも別です。)ナーリンズ、ナリーンズ、ヌオリンズ、ヌオリアンズ、ニヤリアンズ・・・とうてい書き表わせません。
また、ニューオリンズにはこの町だけで使われている特有の言葉がたくさんあります。
例えば:
バンケット:フランス語でベンチという意味ですが、この町で舗道を示します。初めての市の舗道は木造で、女性のスカートが泥やぬかるみで汚れるのを防ぐために、通りとの境をわずかに盛り上げてつくられ、その形からバンケットと呼ばれるようになりました。
バイユー:アメリカン・インディアンのことばで小川という意味です。ルイジアナ州の南には、バイユの網状組織があります。
カフェオレ:フランス語で、コーヒーとミルクという意味です。チコリーの入った濃いコーヒーと熱いミルクを半分づついれたものに使われます。
ケイジャン:アカディア人を意味する俗語で、カナダからルイジアナ南部に流れてきたフランス系の人々をさします。
チコリー:ハーブの一種で、根を乾燥させ、煎り、細かく砕いてコーヒーのフレーバーに使われます。
クローフィッシュ:Crayfish(このスペル通りではクレイフィッシュと読む)と書かれることもありますが、スペルは違っても必ずクローフィッシュと発音されます。このザリガニはロブスターを小さくしたものによく似ており、この土地の料理に幅広く使われています。
クリオール:この地方での最初の移住者を示し、文化や料理、建築スタイル、そしてこの地方原産の農作物なども使われます。
デキシー:ニューオリンズで人気のある地元のビールの名前で、デキシービールは、この町でのみ醸造されています。ビールの醸造所はテューレン・アベニューにあり、内部の見学ツアーが一般に公開されています。(デキシーという言葉は、南北戦争以前にニューオリンズで生まれた言葉です。フランスの影響が強かったため、紙幣は、片側がフランス語で、もう片側が英語で印刷されています。10ドル紙幣はフランス語側に”ディ”(訳者注:フランス語で10の意味をしめす。アメリカ人はディクスと発音する。)と印刷されており、このように、フランス語印刷付きの紙幣が発行されていたため、デキシーと呼ばれるようになりました。(訳者付加:音楽でもデキシーという言葉が使われ、南部は広くデキシーと呼ばれましたが)最初の”デキシーランド”は、このニューオリンズなのです。
ダブルーンズ:マルディ・グラのパレードで、山車に乗った仮面をした人が配る、コインの形をした安い小物を示します。パレードの道々には何千人もが繰り出し、「ミスター、こっちにも何かちょうだい!」と叫びます。
ドレスド:食べ物に(人にではなく)使われる形容詞で、”材料・調味料ひとそろいをのせて出される”という意味です。たいていサンドイッチに使われ、”ドレスド”というと、マヨネーズ、レタス、トマトを付けたものを示します。
エトゥフェ:完熟したトマトをベースにしたソースです。クローフィッシュ・エトゥフェとシュリンプ・エトゥフェは、大変美味な名物料理のひとつです。
ガンボ:魚を使った、ニューオリンズの名物料理のひとつで、ビーフやシーフードに何種類ものスパイスと米をたっぷり入れて煮込んだ、濃いスープです。
ジャンバラヤ:シェフがする"台所の掃除"と例えられるように、黄色い米、ソーセージ、シーフード、野菜、スパイス等を、鍋の縁たっぷりに入れてつくる、これもニューオリンズの名物料理です。
クルー:マルディ・グラのパレードや仮装行列を企画・演出する社交クラブです。ニューオリンズには数多くのクルーがあり、レックス、コムス、エンディミオン、アイリスやモムスなどは、そのうちの一例にすぎません。
ラニャップ:フランス語でボーナスと言う意味で、”余計についてくるもの、おまけ”などの意味に使われます。例えば、カキを14個買うところを12個分の値段で、絵葉書6枚の値段で8枚買う時などに使われます。
マルディ・グラ:フランス語で謝肉祭という意味で、火曜日にあたります。カーニバルの最終日であると共に、灰の水曜日の前夜であり、四殉節の始まりです。”世界で最高の無料のショー”と言われ、パレードやカーニバルが数週間もの間繰り広げられます。
パリシュ:州の下にある意味で、パリシュという言葉を使っているのは米国でルイジアナ州だけです。この、"米国でパリシュという言葉を使うのは、ルイジアナ州のみ"ということが、ルイジアナ州の学校で子供達が最初に習う事の一つです。
マフィラッタ:非常に大きく贅沢なイタリアのサンドイッチです。イタリアのソーセージ、肉、マスタード、ピックルスが大きく分厚い丸いパンの間にぎっしり詰まっています。
ニュートラル・グランド:中央分離帯を意味します。大通りの真ん中で左右を隔てる分離帯です。昔、アメリカ人がニューオリンズに移って来たとき、現在のカナル・ストリートを挟んで西側に住み、クリオール人は東側にあるフレンチ・クオーターに住んでいました。このカナル・ストリートは、用水路を建築する予定でつけられた名前なのですが、建築は実現することなく、しかし用水路建築のために取り付けられていた中央の長い線が、後にアメリカ人とクリオール人を分けるために使われ、ニュートラル・グランド、つまり中立地帯と呼ばれるようになったのです。
プラリーン:プレイリーンではなく、プラリーンと発音されます。砂糖、水、ナッツで作った板状の砂糖菓子で、キャンディ・ショップやギフト・ショップには、多数の種類のプラリーンがあります。
ポボーイ:フランスパンに色々な種類の肉やチーズを挟んで”ドレスド”し、潜水艦のような、筒形をしたサンドイッチです。
ヴィユ・カレー:フランス語で、古い町区という意味です。現在はフレンチ・クオーターと呼ばれ、ニューオリンズの始まりとなった場所です。
(ハニ・ネイラー/ニューオリンズ観光会議委員会広報部からの依頼による執筆)